VII-E.役割解説

ヘッドジャッジ 

ヘッドジャッジは、個々の競技種目におけるジャッジ団の「キャプテン」としての役割を持つ。

その主な役割とは:

競技の開始前にヘッドジャッジの指揮する「競技担当チーム」 (ジャッジ、フィールド・ディレクター、ピットボス、ラインジャッジ)を召集する。

そして:

必要な前置きを説明する。 これから行う競技に関して特に知っておく、 または気を付ける必要がある事柄を各人に簡潔に伝える。 (例えば、フィールドの特性、障害物、ルールブックの明瞭理解等) また、各人の疑問点を討議して明確にする。

参加競技者に対してプレフライト・ミーティングを行う。 (プレフライト・ミーティング要項に関しては、付録Dを参照)

競技フィールド上のジャッジ達[及びスコアラー]をまとめる。 以上の事が済んだらフィールド・ディレクターにOKサインを出して最初の(及びそれに続く)競技者に競技の開始を要請する。 ヘッドジャッジ及びフィールド・ディレクター間の通信機器使用の有無に関わらず、 1つ以上の種目が同時に行われるような場合には、 電波の乱れが顕著になるため、手信号による交信が推奨される。

ヘッドジャッジは、幾つもの役割を同時にこなさなければならない。 ...競技種目におけるオフィシャルのリーダーとして、 フィールド上の競技運営に関するアドバイス及び、競技進行のための諸判断を、 常に行える体勢を整える。 ...審査内容を最高レベルに維持する、 また、予想外の風向きの変化への対応 (ジャッジ、フィールド・ディレクター、ピットボス、及びラインジャッジを移動させる場合もある)ことを含めて、 競技フィールドにおける全ての活動をコントロールする。 ...当該種目、または競技会全体に関連したチーフジャッジ、 アナウンサー及びイベント・オーガナイザーからのあらゆる要請に対応する。

演技に関わるペナルティーに関して、全体の統一性を確保するために評定する必要がある場合、 また、グラウンドタッチの回数等の確認及びフィールド・ディレクターとの制限時間違反に関する討議を行う場合には、 その調整/判断及び適用を行う。

上記の事柄に加えて、ヘッドジャッジは、他のジャッジ達、フィールド・ディレクター、 及びピットボスの役割も把握しておく必要がある。



ジャッジ

ジャッジ(達)は、ジャッジ・パネル(3名または5名によって構成される審査員団)の一員として任命され、 ヘッドジャッジの指揮のもとに競技種目を審査する。 ジャッジの役割を果たすために大切なポイントを以下に挙げる。

ブリーフィング:ジャッジは、各種目の競技開始前に、 その種目の採点基準に関する具体事項を再確認する必要がある。 審査に関する疑問点は、全てヘッドジャッジと検討する。 ジャッジ(達)は、ルールの説明及び競技者の疑問への解答を傍聴するために、 ヘッドジャッジの主催するプレフライト・ミーティングに出席するべきである。

プロとしての意識:一般的にジャッジ(達)は、 競技種目が終了するまで各競技者の演技に関する討議を他のジャッジと行ってはならない。 例外として考えられる状況として、 (但し、これはヘッドジャッジの裁量に委ねられる)その種目が新しいために、 ジャッジの中で審査経験の無い人がいる場合(例:フリー・スタイル、クワッドライン競技等)、 または、何人かのジャッジが経験不足な場合、他のジャッジとの討議が助けになることがある。

各ジャッジは、公明正大かつ客観的に審査を行う義務がある。 特定の競技者に対する、目立つ言動や意見または言及は、私情を含んだ好意的な扱いのように見え、 他の経験不足なジャッジの審査に影響を及ぼす場合がある。 全国的なランキング・システムの展開及び、賞金が増大している昨今、 ジャッジには特に、公平無私な振舞いを常に心掛ける事が重要となってくる。

ジャッジ(達)は、周囲に対して常に、 自分達が有能な関係者であることに反しないような行動をとることが要求される。 競技中のアルコール類の摂取は、競技者に対して良くない印象を与えるため禁止されている。

採点手順:ジャッジ(達)は、担当種目における各競技者の演技毎に、 スコアシートに得点を記入する必要がある。 競技を開始する前にスコアシートに目を通して、採点要素を復習し、各項目を習熟しておく。 また、疑問がある場合には、競技開始前にヘッドジャッジと検討する。

採点方法:スポーツカイト競技の審査に関して、現在人々が最も関心を寄せているのは、 その採点のための、より精巧な採点システム、コンセプトまたはアプローチの導入と言えよう。 以下に、有効性の最も実証された実際に使用されている採点方法を挙げる。

  過去を水に流す方法 − 言葉に表現される通り、各競技者の演技は、 その前の競技者の演技と意識的に比較するのではなく、その評価を単独に審査される。 ジャッジは、出来る限り客観的に審査を行い、 また、たいがい存在する「主観的な採点」を全ての競技者に対して一定に割り当てるよう心掛ける。 一番簡単にこの方法を適用できるのが、審査要点が明確なコンパルソリー・フィギュアの採点で、 反対に難しいのが、競技者が次に何を演技するのかが予想できない規定フリースタイル、 バレー及びフリー・スタイル種目と言える。 このため、競技者のクラス及び各種目ごとに置かれている焦点の違い等を、 常に心に留めて審査に当たることが必要となる。

  加点採点法 − この方法では、各競技者の得点が0から始まるものと見なされる。 演技が呈示するプラス要素に乗じて(頭の中で、もしくは書き控えておいたプラス要素の数を計算して) 得点が加算される。 この方法は、競技者が次にどんな演技を行うかの予測が困難な場合に、 特に有効である(例:規定フリースタイル、バレー、フリー・スタイル種目等)。 この実施方法は個人差が大きく、ジャッジによっては演技の進行に伴って少しずつ得点を加算したり、 書き控えておいたプラス要素の数を、演技終了後に計算したりする場合がある。

  減点採点法 − この方法では、各競技者の得点は満点(100) から始まって、 演技における失敗等に基づいた点数を減点していく方式を採る。 この方法は、図表と全く同じ様に演技しなければならないコンパルソリー・フィギュアの審査を行う場合に、 最も多く利用されている。

  この減点法は新人ジャッジにとって、最も適した採点方法であるが、 この方法を使用する場合には、 何らかの方法(指標)を用いて各自の採点が一貫したスコアとなるように示唆することが重要である。

  比較方式 − この方法は、新規種目または新人ジャッジを審査に順応させるために利用される。 本方式は、ヘッドジャッジの承諾の下においてのみ利用され、 最初の1人か2人の競技者の演技に対してだけ行われるのが一般的である。 以下にその手順を挙げる。

  各ジャッジは、競技者の演技に対して個別に採点を行う。

  各ジャッジは、自分の採点したスコアを個人的にヘッドジャッジに知らせる。

  ヘッドジャッジは、全員のスコアの平均値を計算し、全員に結果を発表する。

  各ジャッジは、平均値と自分のスコアを見比べて、必要とあらばスコアを加減する。

  比較方式では、 もしジャッジ(達)の採点したスコアがジャッジ全員のスコア平均と際立って違っている場合に、 各自のスコアを加減する機会を提供する。 更に、ジャッジ達のスコアが全く「的を得ていない」場合、 ヘッドジャッジは、ジャッジ達が焦点を正しく置いて審査を行うために、 当該方式が継続利用されるべきかを判断する。 この場合、ヘッドジャッジはジャッジとの討議のために、 競技の間に時間を設ける必要がある。

  天気状況 − 風向き及び風速等の変化は、競技者の演技に非常に大きく影響を与えるため、 こうした天気状況は、ジャッジにとって非常に難しい問題である。 審査する人間にとって、「上手」な競技者が風が悪くて苦労しているのか、 「下手」な競技者だから風に対応出来ないのか、 という事を見極めて常に同じ判定を行うのは不可能に等しいと言えよう。 このため、採点は、悪天候あるいは風の変化といった天気状況を考慮に入れずに行うものとする。

  異なるカイトの性能 − 競技者が使用するカイトの機種によって、 同じマヌーバーでも違うように見えたり、 また風速が同じでもカイトの動きには違いがある場合がある。 こうした事から、特定機種のカイトに多くのフライト経験や知識を持つジャッジの中には、 そのカイトを使用した演技の審査において無意識の内に主観が入り込み、 客観的な採点に影響を及ぼす場合がある。 このため採点時には、カイトの機種に基づいた意識的な加点、減点は行わないものとする。

  ジャッジを行う人間にとって、 多機種にわたり市販されている全てのカイト性能を満足に審査出来るだけの経験を積むことは昨今不可能となりつつある。 また、ジャッジ陣全員が限定仕様のカイトや特別設計されたカイトのフライト経験がある場合など到底あり得ず、 ましてやカイトのパーツ仕様を変更していたりチューンアップされていることや、 それによってカイトの特性がどのように変わっているのか、など知る由もない。 こうした事由から、ジャッジはカイトの性能ではなく、あくまでも競技者の演技を審査する。

  採点の一貫性 − 審査における重要な関心事として、 ジャッジのスコアが全ての競技者に対して一貫性のあるものか、 また、それらのスコアが他のジャッジ達のスコアと対比してどうか、などが挙げられる。 採点の基準値を設定するためには、比較方式が有効とされるが、 残念な事に全ての競技者に対してこれを行うには時間がかかる過ぎる。 このため現時点においては、 それぞれのジャッジが、 さまざまな競技会にてさまざまな競技者の審査経験を多く重ねる事が、 採点に一貫性を持たせるために一番の近道だと思われる。 そして常に、審査する種目の基準要素を念頭に置いて採点に当たることである。

また、前述にある「プロとしての意識」の中で述べた事に若干矛盾するが、 競技進行中に各ジャッジのスコアを公表する (各競技者の得点をスコアカードを使ってその場で発表、 またはスコアラーによる放送での得点発表等)ことが採点の一貫性に一役を担う場合もある。 (しかし、これらの方法も共に時間を消費するので実用的ではない場合もある。)


フィールド・ディレクター


一般事項:

フィールド・ディレクターは、競技フィールド上において以下に挙げる全ての活動を管理する責任がある。

競技者、ジャッジ及び観客の安全確保。

フィールド上で演技を行っている競技者の動きの監視、及び演技の経過時間の測定。

競技フィールドに、観客や他のカイト等が入り込まないように監督。

ヘッドジャッジにフライトオーダーを確認すること。


競技進行手順

フィールドディレクターは、以下の手順で競技者に対応する。

次の競技者の入場をピットボスに指示する。

カイトが境界線の中に留まるように、競技者の立つ位置を指導する。

競技者の準備時間を監視するために、1つ目のストップウォッチで計測を開始する。 (競技者は演技の準備のために然るべき時間を与えられている。 この詳細に関しては、ルールブック本文中の「準備時間」の項を参照の事。)

ヘッドジャッジに、競技者の氏名及びフライトオーダーの番号を伝える。

競技者にウインドチェックを行うよう指示する。 (カイトをウインド・ウインドゥ上で上下左右にフライトして風の状態を確認すること。)

ジャッジ達から準備オーケーの合図が出たら、競技者に演技を始めるよう指示する。

競技者または競技チームのリーダーに、演技の開始時に「イン」と声を掛けるように指示する。 そして「イン」コールが掛かったら、旗や手を上げる、 または競技会によっては笛を吹く等の方法で、競技者が演技を開始した事をジャッジに合図する。

バレーの種目に関して、音楽がまもなく始まるとき、ジャッジにその旨を伝える。 音楽が始まったときが競技者の「イン」とみなされ、 競技者は「イン」と声をかける必要はない。

規定の種目では、「イン」合図と同時に(第一の)ストップウォッチをスタートする。 バレーの種目では、音楽が始まった時(第一の)ストップウォッチをスタートする。

競技者から演技終了を示す「アウト」の声が掛かったら、そのことをジャッジに合図する。 そして演技の経過時間を確認して、 合計演技時間が当該種目に規定されている最小及び最大許容時間外であった場合には、 ジャッジにこのことを伝える。


最大許容制限時間の超過:

競技者の演技が、当該種目の最大許容時間を超えた場合、 まず、ジャッジにこのことを合図するために、 赤い手旗または手を上げてから「タイム」とコールする。 次に、競技者に最大許容時間が経過したことを伝えて演技を中止させる。


規定コンパルソリー・フィギュアの進行手順:

ジャッジの準備が整い次第競技者に課題図形を見